入れ歯について その2
2024年12月29日
不定期ながら、歯科医療、治療について投稿しております。
皆様のご参考になれば幸いです。
入れ歯について その2
歯を抜歯して入れ歯を作製し、お口の中に装着することは決して簡単なことではありません。
単純な治療ではありません。
入れ歯の製作工程だけでも、
型取り、
咬み合わせ、高さ、歯の配列を決める咬合採得
それを基にワックスで並んできた歯、入れ歯の試適
完成し実際にお口の中に入れた時の調整
多くの製作工程があり、型取りして次回できてくるわけではありません。
1ヶ月はかかるのです。
入れ歯を装着しても、慣れるまで1ヶ月間かけて、こすれて痛みのある箇所の入れ歯の調整、食べ方など、リハビリと捉えることも大切です。
義手、義足と同じなのです。
型取りだけでも、既存の型取りの器具(トレー)は、S、M、Lと平均的な大きさになっており、精密な型取りをするには、個々に合った型取りのトレーを作ることから始まります。
そもそも長年の放置から、骨隆起(骨の出っ張り)、脂肪の塊などがあれば、先ず、それらを除去し、入れ歯が入れられる環境を作らなければなりません。
咬み合わせ、歯の並びを決めることも簡単ではありません。
現状の高さで並べるのか?
全ての歯を抜歯したならば、歯があった健全な高さ、並びを想定して決めなければなりません。
必要ならば、昔のお顔の写真を参考にすることもあります。
実際、歯を配列したものがお顔にマッチしているか?
必要に応じて、高齢者の場合、ご家族も同伴してもらい確認することもあります。
ご家族が、何気なく歯が大きいなどの一言が、入れ歯を作り直して欲しいとなる場合もあるのです。
部分入れ歯も、単に保存不可能な歯を抜歯して、入れ歯を作製すればよいという単純なものではありません。
長い間、残っている歯で生活していれば、歯並び、咬み合わせは崩壊しています。
歯並びが悪るければ、入れ歯を入れる事自体が無理しています。
やはり、入れ歯を入れられる環境を作ることが重要となります。
身体は、何か失えば、必ず生命活動を維持するために対応していきます。
下の奥歯がなくなれば、その隙間を埋めるために舌の肥大、上の奥歯が下に挺出(伸びてくる)、横の歯が倒れる、前歯が前に倒れるなど、口腔機能(呼吸、咀嚼、嚥下、発音)ができるように対応します。
歯が重度にすり減っていようが、歯がほとんど無い状態だろうが、顎関節、舌がリカバリーしてくれています。
だから、人は良くも悪くも放置できるのです。
しかし、それは決して良いことではありません。
ご自身の身体を大切にしていないことなのです。
歯が無い環境が長ければ長いだけ、入れ歯に対応できるようになるためには時間がかかります。
リハビリテーションと認識することも重要です。
介護を受ける、訪問診療を受ける状態から入れ歯を作製し使いこなせるようにすることは難しいのです。
介護従事者が、1人1人食べさせてあげること、個々の献立メニューがあるわけでもありません。
結果的には、ご家族が毎日、施設に足を運び食べさせてあげているのが現状なのです。
高齢者の死因は、嚥下障害、誤嚥性肺炎、口腔機能低下によることがほとんどなのです。